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心臓病をよく知ろう

日常生活では『交通の大動脈』などと言いますが、皆さんはご自分の大動脈のことをご存知でしょうか。大動脈は心臓から全身に送られる血液の最初の通り道で、直径2~3センチもある太い血管です(図)。大動脈は、胸のほぼ中央にある心臓から、まず上の方に出て頭や腕に向かう枝を出し弧を描いて反転して下に向かい、お腹で内臓への枝を出し、左右の足に分かれるまでの血管です。もともとの大動脈はしなやかですが、長年のうちにその壁は古いホースのようにもろくなり、高血圧や動脈硬化でさらに弱くなります。弱くなった壁が壊れるのが大動脈瘤と大動脈解離で、中年以降、高齢者に多い病気です。
大動脈瘤は、弱くなった大動脈の一部が血圧に負けて何年もかけて風船のように膨らむ病気で、70歳以上の高齢男性に多いことがわかっています。瘤ができると正常には戻らず、1年間に2~5ミリずつ大きくなります。自覚症状は無く生活に支障もありませんが、瘤が大きくなると壁が弱くなり、突然破れることがあります。一旦破れると強い痛みとともに大出血して命に関わるため、破れる危険が高くなる前に治療が行われます。瘤のある部分を人工血管と入れ替える手術か、足の付け根の血管を通して人工血管を入れ、瘤の内側から補強する治療が行われます。我が国では毎年10,000人前後の人がこのような治療を受けています。比較的安全な治療なので、瘤が破れる前に見つけて適切な時期に治療することが大事です。

何年もかけて大きくなる瘤とは違い、大動脈解離は大動脈が突然、竹を割るように縦に裂ける病気です。胸や背中に強い痛みがあり、大動脈が裂けるにつれて数分のうちに痛みが移動することがよくあります。心臓近くの大動脈が裂けると命に関わるため、緊急手術になります。裂けた部分を人工血管に置き換える手術が主流ですが、裂けた血管の内側から人工血管で補強する治療法も次第に広まりつつあります。心臓から離れた大動脈が裂けた場合は手術ではなく、薬で血圧を下げて安静にした方が良いことが経験的に分かっています。我が国では、解離で緊急手術になる人は年間2,000~3,000人で、心臓から離れた解離も同数ぐらいです。
大動脈の病気は、高血圧や動脈硬化を招く生活習慣のため、壁が弱くなることが原因なので、生活習慣病予防が大動脈病予防につながります。中でも喫煙は大動脈の壁を非常に弱くして病気を起こしやすくするだけでなく、肺の病気(慢性閉塞性肺疾患、またはCOPDと呼ばれます)を引き起こして、手術治療の妨げになることも少なくありません。今からでも是非禁煙してください。大動脈瘤や解離には体質(遺伝)が深く関わるので、親族に大動脈の病気がある人は特に注意が必要です。生活習慣病の予防や診断には定期検診(人間ドック)が大事です。検診の腹部超音波検査(エコー検査)で大動脈瘤が見つかることも少なくありません。大動脈を一生大事にするためにも生活習慣に心を配り、健やかな日々をお送り下さい。